世に従わん人は、先ず機嫌を知るべし。序悪きことは、人の耳にも逆らい、心にも違いて、そのこと成らずーー徒然草155段の冒頭です。「機嫌」とはタイミングのこと。「序」は「ついで」と読み、順序のことです。
まさに、人間社会の真理を突いた言葉です。何かを願って行動する時、タイミングを窺い、アクションの順序を間違えないようにするーーとても大切なことです。
この言葉に出会ったのは、60を過ぎてからです。振り返ってみますと、相手の機嫌が良い時に(先ず機嫌を知るべし・・・ダジャレのようですね。でも、相手の機嫌が悪い時もやはりタイミングが悪い時です。「機嫌」の意味が違いますが・・・)
本当の意味でのタイミング、組織全体の意識、社会の動向、価値観の変化、意思決定権限者の理解度、これらが整った時に行動します。すると、あら不思議、とんとん拍子にことが進みます。
私事ですが、入庁したての頃、何かの研修で「地方都市の活性化」について議論する機会がありました。私は「市民ぐるみの国際交流」を提唱しました。「小さな地方都市でも、いろんな料理が食べられ、いろんな文化に触れ合えるといいな」という程度の軽い考えでした。
経済効果に着目した発表ばかりの中、市民のライフスタイルに着目した提案は好評でした。研修終了後、課内で私の研修報告を兼ねた軽い酒席がありました。私の発表内容に上司も職員の仲間も多いに賛同してくれました。しかし、実現化の動きはありませんでした。「機嫌」が整っていなかったのですね。
ところが、20年ほどの月日が流れ、世の中は国際交流という言葉が大流行となりました。国際交流センターが建設され、国際交流協会が設立されました。私が音頭をとって動いた訳ではないのに・・・皮肉なことに、私はその責任者となりました。
世の中には、埋没した事案が数年後に世論の追い風を受けて復活する(先ず、機嫌を知るべし)とか、組織の序列を無視して行動したために、プロジェクトが行き詰まった(序悪きことは・・・そのこと成らず)の例は沢山あります。ある程度の社会経験を積んだ人であれば、思い起こす事も多々あると思います。不思議なことに、この155段を声に出してみると、古典が一挙に現代社会を生きるヒントに変わります。
*これから、週1のペースで「心和む体験や話題をblogで発信します。気に入ったフレーズ(短歌や詩の一部、エッセイや小説の一部などのことも)を示し、私の体験と考察を添えるという形式を考えています。宜しくお願いします。
